一斉テストの課題図書

今日の課題図書確認テストは近代日本文学の巨人谷崎潤一郎と

世界文学の旗手カズオ・イシグロでした。ちゃんとできましたか?

さて、今度は一斉テストで出題される課題図書2冊の紹介です。

まずは津村記久子の『エヴリシング・フロウズ』です。


津村記久子は非正規で働くいわゆる「弱者」の女性たちに

はじめて「声」を与えた小説家と言われています。

この『エヴリシング・フロウズ』は中学生のヒロシが主人公ですが、

中学生もまたこの世界の中ではとても弱い存在です。

でも津村はたとえどんなに弱くても何かができる、そういう人たちを描いています。

実は私(鈴木)、津村記久子のトークショーに行ったことがあるのです。

そのとき、質問用紙の端に


こんな絵を何とはなしに描いておいたら、このぶたさんかわいい!と言ってくれました。

津村さん、いい人!


さて、続いて2冊目はNHKのディレクター佐々木健一によるルポルタージュ

『雪(そそ)ぐ人 「冤罪(えんざい)弁護士」今村核の挑戦』です。


日本の裁判における有罪率は99.9%。無罪判決が出るのは1000件に1件。

しかし有罪となった999件の中に、もし冤罪があったとしたら…。

日本の裁判史上には有名な冤罪事件がいくつかありますが、

弁護士今村核が扱うのは、人々の記憶に残らないような小さな事件ばかり。

ですが罪を着せられた人にとっては一生の問題です。

そんな法的弱者に今村は徹底的に向き合います。

しかし今村は、いわゆる「優しい」人ではありません。

コンプレックスにまみれたとっつきにくい人間です。

著者である佐々木健一は、その今村がなぜ冤罪事件に取り組むのか、

その「業(ごう)」ともいうべきものに迫っていきます。


どちらも「弱者」に触れる物語でありルポルタージュですが、

その雰囲気は全く異なります。

その違いをぜひ味わってください。