まだまだ先だと思っていた期末試験も半月後に迫ってきました。
今回は期末試験までに読んでおく課題図書を三冊ご紹介します。
一冊目は中島らも『今夜、すべてのバーで』。
主人公は「35歳で死ぬ」と予言された男、小島容。
彼はアルコール依存症で入院することになり、
病院という非日常の空間の中で様々な出来事に出会います。
中島らもは抜群のストーリーテラー、
みなさんはおそらく、ぐいぐいと物語に引き込まれていくと思いますので、
これ以上、ストーリーについては紹介しません。
この小説はストーリー以外にも魅力が溢れていて、たとえば、
「教養」とは学歴のことではなく、「一人で時間をつぶせる技術」のことでもある。
といった警句がさりげなくちりばめられており、それもまた読書の楽しみを引き立たせます。
作者の中島らもは泥酔して階段から転げ落ち、あっけなく亡くなってしまったのですが、
『今夜、すべてのバーで』の主人公小島容は、ラスト、どのような風景を見るのでしょうか。
続いて2冊目は平田オリザ『幕が上がる』。
ある地方の高校の弱小演劇部、そこに新任教員がやってきて、全国大会を目指すことになります。
まさに王道の部活小説であり、青春小説。
2015年には映画化もされ、もしかして知っている人もいるかもしれませんね。
ですがこの小説、単に王道であるだけではなく、とにかく細部のリアリティがすごいのです。
作者である平田オリザは劇作家。
ですからその経験がいたるところに顔を出し、
読者は演劇ってこういうものなんだ、という驚きに打たれることになるでしょう。
で、この演劇部が上演するのが、課題図書の3冊目、宮澤賢治『銀河鉄道の夜』。
(試験に出るのは「銀河鉄道の夜」という作品だけです。)
まだ読んでいない人がいたら、これはぜひ読んでおきましょう。
この『銀河鉄道の夜』、さまざまな作品におけるイメージの源泉になっているのです。
たとえば宮崎駿『千と千尋の神隠し』の海原鉄道。
このシーンは、宮﨑版『銀河鉄道の夜』と呼ばれています。
同じアニメーションでいえば、登場人物を猫に置き換えた
杉井ギサブロー監督による『銀河鉄道の夜』も名作です。
これは宮澤賢治の原作をますむらひろしが漫画にし、
それをアニメ化したものですが、
宮澤賢治研究者もこぞって絶賛した作品となっています。
細野晴臣の音楽も素晴らしく、
小説を読んだら、こちらのアニメーションもぜひ観てください。
今回の課題図書はバラエティに富んだ3冊になっています。
勉強の合間に楽しんでくださいね。