夏休みの課題図書

 待ちに待った夏休み。

でも新型コロナのせいで、外に出かけるのもな…。

そんな時にこそ課題図書です!

今回はたっぷり5冊、まずは綿矢りさの『かわいそうだね?』


この本には2編の中編小説が収められていて、

表題作の「かわいそうだね?」は

恋人が元カノを同棲させると突然言い出すところから始まるお話しで、

もう一作の「亜美ちゃんは美人」の方は、

主人公のサカキちゃんも美人なんだけれど、

その友達の亜美ちゃんはもっと美人、というお話し。

一癖もふた癖もある設定ですが、

綿矢りささんは「恋や友情ってなんでうまくいかないんだろうな~」という問いに

答えを見つけるつもりで書いたとのこと。

特に「かわいそうだね?」のラストは秀逸!ぜひ読んでみてくださいね。


続いては夏目漱石『こころ』。今から100年以上前に書かれた小説ですが、

これも『かわいそうだね?』と同じく、まさに「恋や友情がうまくいかない」お話しです。


いえ、「恋や友情がうまくいかない」というよりも
「恋と友情が対立する」物語といったほうが正確でしょうか。
 
 しかし、しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていますか?

登場人物の「先生」が青年に言う言葉です。
なぜ「恋は罪悪」なのか、100年前の恋愛小説を
ミステリーのように読んでいってもらえたらと思います。
 *二学期の授業ではこの『こころ』を読んでいきます。
 「ちくま文庫版」を教科書代わりにしますので、必ず購入しておいてくださいね。


さて次は、中杉生の大好きな高野和明『ジェノサイド』

高野和明は1年生の時に『13階段』で出したことがありましたね。
今回の『ジェノサイド』は『13階段』よりもさらにスケールアップ、
そして読めはじめたら止まらないジェットコースターノベルです。
アメリカの傭兵イエーガーが主人公のアメリカ編、
創薬化学を専攻している大学院生古賀研人が主人公の日本編、
世界を舞台に人類が経験したことのない事態が動き始め、
その流れの中に巻き込まれるイエーガーと研人。
しかしこの小説はスケールが壮大であるだけでなく、
さまざまなところで、友情、そして友愛が描かれている点が
読みどころでもあります。
英語の渡辺先生も一気に読んだというこの小説、
みなさんもぜひ楽しんでください。

最後はちょっと変わって天畠大輔『〈弱さ〉を〈強み〉に』。
この天畠さん、中学生の時に若年性急性糖尿病にかかって脳死状態となり、
ようやく意識を取り戻したら、体を動かすことも話すこともできなくなってしまった、
そのような複数の障がいを持った方です。

この複数の障がいを抱えた天畠さんにとって何が一番重要なものかというと、
それは人といかにコミュニケーションをとるか、といったことです。
声も出せず、体もほとんど動かせない天畠さんが編み出したのが
「あかさたな話法」です。
動画があるので、リンクを貼っておきます。ちょっとみてください。
実はこの本も「あかさたな話法」で執筆されたものです。

https://youtu.be/GPwQu50JeuE

これを見るとわかるように天畠さんは誰か他者の助けを借りないと
自分の思いを表現できません。
ではその他者とどのようにつながっていくのか、
それが天畠さんのテーマになっていきます。

今回この本は校長先生から推薦されたものです。
実は天畠さん、中央大学で研究をなさっていたことがあるのです。

中央大学がどのようなことを推進している大学なのか、
その一端も分かりますので、ぜひじっくり読んでみてください。

ではみなさん、よい夏休みを!