緑苑祭も終わり、中杉に静かな秋の気配が漂い始めました。
秋と言えば「読書の秋」。そんな季節にじっくり読みたい3冊をご紹介します。
まずは山本周五郎『さぶ』。
原先生が高校生の時、イギリスに短期留学をした際、
そのおともに持っていったのがこの『さぶ』なんだそうです。
江戸時代の表具職人が主人公の地味な話ではあります。
ですが、人を実直に描くということはこういうことなのかも、
と思わせる筆力があります。
読み進めていく中で、あれ?と思うのが、
この物語の主人公が「さぶ」ではないということ。
主人公は栄二という青年なのです。
ではなぜ「さぶ」というタイトルなのか。
それを考えながら読んでも面白いかもしれません。
続いては柚木麻子『嘆きの美女』
にもかかわらず、私たちは容貌にこだわり、
ときに容貌はひとの人生を狂わせていきます。
この『嘆きの美女』は美女たちが住む館に、
容姿にコンプレックスを抱く耶居子が住むことになるという物語です。
この小説が秀逸なのは、美女対耶居子という単純な対立になっていないところです。
単純でないのに、読んでいる間はページをめくる指がとまらない、
疾走感あふれる物語になっているのです。
ぜひ楽しんで読んでください。
さて最後は鷲田清一の『京都の平熱』です。
京都生まれの哲学者である鷲田清一が京都市営バス206番に乗って
読者を京都案内にいざないます。
私たちは京都を観光都市だと思っていますが、
鷲田によると観光による売り上げはわずか1割程度。
京都は内陸型の工業都市だというのです。
そういわれてみれば、京セラとかオムロンとか、
みんな京都の企業ですね。
誰もが「京都」という名前は知っていますし、
どのような都市なのか、だいたいのイメージを持っています。
ですが、京都はそんなイメージを覆す得体のしれない奥深さを持っている。
来年の一月には研修旅行で私たちは京都にでかけます。
単なる観光客の眼ではなく、鷲田清一だったら、この風景をどのように語るのだろう、
そのような視点で見てみると、思いもよらない京都が姿を現すかもしれません。
読書の秋、みなさんがたのしいひと時を過ごせるよう祈っています。