11月8日の課題図書

早いもので、2年生ももう半分終わってしまいました。
ということは、高校生活も半分終わってしまったということですね。
そんな高校生活の折り返し地点、今回は都市という視点で2冊の課題図書を選んでみました。
まず1冊目は、有川浩『阪急電車』です。

みなさんは来年1月、関西に行くわけですが、
もしかするとチョコレート色の古風な電車を目にすることがあるかもしれません。
それが「阪急電車」です。
みなさんは「阪急電車」と聞いてもあまり縁がないように思うかもしれませんが、
映画の東宝や宝塚歌劇団なども同じ阪急電鉄グループです。
阪急電鉄の創業者は小林一三、彼は鉄道を中心とした都市づくりを推進しました。
乗降客を増やすため、駅周辺の宅地開発をし、
宝塚歌劇団やデパートなどの娯楽商業施設を作ったのです。
鉄道を中心として都市がつくられ、
そしていつしかその路線自体が個性を持つようになります。

この『阪急電車』という小説は、阪急今津線を舞台とした物語です。
たまたま同じ電車に乗り合わせた人たち、
一人ひとりが主人公となる連作短編になっており、
それぞれの主人公たちが時に交錯し合うところが
一つの読みどころになっています。
都市という空間だからこそ生まれた物語であるということができるでしょう。

さて2冊目は、カミュ『ペスト』です。

新型コロナはいまだに終息する見込みが立っていませんが、
この小説は、やはり伝染病であるペストをテーマにしています。
舞台はフランスの植民地であるアルジェリアのオラン市です。
このオラン市でペストが発生し、人々はペストに翻弄されることになります。
新型コロナで苦しむ私たちにとってもペストは身近なテーマで、
読みながらうなづくことも多いのではないでしょうか。

さてこのような伝染病がパンデミックとなるには、
都市という密集空間が必要となってきます。
江戸時代、江戸や大坂、京などで暮らす都市生活者は
田舎で暮らしている人たちに比べて、
平均寿命が短かったそうです。
それは密集空間で暮らしているため、伝染病にかかりやすく、
そのために命を落とすことが多かったからです。

今回の2冊は、都市の明暗をそれぞれ映し出したものになっています。
みなさんも都市という視点で今回の課題図書を読んでみてくださいね。