冬休み課題図書

ようやく明日で5日間の期末試験が終わりますね。
明日から生協で課題図書の販売が始まります。
ちょっと気が早いのですが、冬休みの課題図書の紹介です。

まずはじめに、研修旅行京都枠ということで、
浅田次郎『壬生義士伝』(上・下)です。



みなさんは1年生の時に司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読みましたね。
『燃えよ剣』も今回読む『壬生義士伝』も、幕末の新選組を描いた作品です。

ですが二つの作品はその趣をずいぶん異にしています。
『燃えよ剣』の主人公は新選組副長土方歳三。
洋装の写真も残っていてかっこよく、幕末の大スターですね。

『燃えよ剣』は土方が新選組という素人集団を
どのように組織化していくのかというところに重点が置かれていました。

それに対し『壬生義士伝』は、剣の腕は立つものの、
金に汚い守銭奴とみなに蔑まれ、無名のままに終わった
新選組隊士吉村貫一郎を主人公としています。

一隊士の視点で新選組を見ると何が見えてくるのか、
そして「守銭奴」吉村貫一郎はなにを「義」と考えたのか。

決してかっこいい物語ではありません。
ですが、読んだ後、ずっと心に残る物語なのです。

たとえば「痛い」「寒い」「おにぎり」。
このような身体感覚と日常に根差したものが
読者の心に残り続けるのです。

作者の浅田次郎は本校第5期の卒業生、
みなさんの大先輩にあたります。
大学には行かなかったので本校が最終学歴になります。

自衛隊員になったり、アパレル業界で働いたりしながら作家になり、
今は、毎朝サラリーマンのように決まった時間におき、
午前中は執筆活動、午後はひたすら読書を楽しむ、という
毎日を送っているそうです。

このような破天荒な経歴と生真面目な性格から
生み出される小説は見事なエンターテイメントに仕上がっています。

この『壬生義士伝』もぜひ楽しんでくださいね。

続いては社会派ミステリーの巨匠、松本清張です。
松本清張も浅田次郎同様、大学にはいっていません。
高等小学校を卒業したあとは、印刷工などをして
生計を立てていました。

松本清張は40歳を過ぎて作家デビューし芥川賞を受賞、
その後は『点と線』『砂の器』『ゼロの焦点』など次々と名作を発表しました。
清張の小説は何度もドラマ化されているので、
みなさんも名前くらいは聞いたことあるのではないでしょうか。

あのテレビドラマ「家政婦は見た!」の原作も松本清張です(「熱い空気」)。

その松本清張の入門書として最適なのが、ミステリー短編集『張込み』です。


「張込み」「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」
「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」の計八編、
タイトルからして秀逸です。

松本清張が切り拓いた社会派ミステリーというのは、
謎解きよりもむしろ、なぜそのような犯罪が起きてしまったのか、
その背景にある社会問題をあぶりだすジャンルのことを言います。

いわゆる殺人鬼ではなく、普通の人間が追いつめられて殺人を犯す恐ろしさ。
これは二学期ずっと読んできた漱石の『こころ』と通じるところがあるかもしれません。

特に恐ろしいのは「鬼畜」。普通の気の弱い人間が「鬼畜」になるのです。
恐ろしいのに、物語から目が離せない、名作中の名作です。

浅田次郎も松本清張も
いわゆる大学を出て作家になって、というコースをたどっていません。

だからこそ社会が見えていて、それが作品の魅力になっているのでしょう。

今回の課題図書も楽しんで読んでくださいね。

  *確認テストは1月17日(火)になります。