学年末試験の課題図書

ついこの間、研修旅行から帰ってきたと思ったら、

すでに音楽祭も終わり、

はやくも学年末試験の影がうっすらと見えてきました。

慌ただしい毎日ですが、みなさんには入試休みが4日もあります。

この4日間、おでかけだけではなく、ぜひ読書にも親しんでみてくださいね。


さて今回の学年末試験にむけての課題図書は次の2冊です。

まず1冊目は川上未映子『きみは赤ちゃん』。


川上未映子は世界でも権威のある『全米批評家協会賞』の

小説部門最終候補にノミネートされている今話題の小説家です。


その川上さんが自身の妊娠、出産、子育ての日々を描いたエッセイが、

『きみは赤ちゃん』です。


原先生曰く、経験したことのない人は想像するしかない、

妊娠、出産、子育ての大変さや苦悩が

笑い込みで軽やかに描いており、

そこがおすすめポイントだとのこと。


これからみなさんは妊娠や出産や子育てを

経験する人もしない人もいることと思います。


ですが誰もがお腹の中にいて、生まれてきて、育てられてきたのです。

それがどんなどたばたした非常事態であったのかを、

このエッセイを読むと驚きとともに追体験できます。


はやりの言葉でいえば、いわゆる「解像度が高い」文章で、

どのシーンもまるで大河小説の一節のよう。

うわあっと驚きながら読んでみてください。


2冊目は山本文緒『自転しながら公転する』。


作者の山本文緒は、昨年、残念ながら50代にして亡くなってしまったんです。

死の直前まで書くことをあきらめず、

亡くなってなお読者の心をつかんで離さない作家です。


さてその山本文緒の『自転しながら公転する』。

主人公はアラサー女子の都(みやこ)。

母親の看病のために実家に戻り、

牛久大仏が見下ろす巨大ショッピングモールで働くさえない日々。


しかしそんな都にも恋が訪れます。

同じショッピングモールの寿司屋で働く貫一と恋人になるのです。


ですがその恋もやはりどこかさえず

この人と付き合っていいのかと自問自答することばかり。


ただ、こんなどこにでもあるようなさえない恋模様なのに、

なぜかページを繰る手を止めることができません。

ひきつけられるのです。


ですが、この主人公の都に感情移入できるかどうか、

人によってずいぶんと違うようです。


原先生は感情移入しっぱなしとおっしゃり

池田先生は感情移入など全くできないとおっしゃっていました。


私(鈴木)はどうかというと、ある時は都に共感し、

ある時は、あ~、もう都ったら!と批判的になり、

とにかく読んでいて、心忙しいのです。


『君の名は。』の新海誠監督は「僕は山本文緒から多くを学んだ」と語っています。


さてみなさんは、この物語をどのように読むのでしょう。

読んだら感想をぜひ教えてくださいね。