課題図書紹介

今回の課題図書のレビューです。今年は、図書委員さんが順番で行います!

吉村昭『雪の花』

――現在では私達にとって脅威の存在ではなくなっている天然痘。耳にすることもほとんどありません。しかし、江戸時代には日本各地で感染が広がり、人々を苦しめていました。この本はそんな天然痘の治療法を日本に広げるために尽力した町医の話です。

 私はこの本を読み、庶民に新たな治療法を理解してもらうことがいかに難しくて大変かを知りました。天然痘は人から人へ感染する、なかなか治療法を安心して庶民に受け入れてもらえない、という点から、昨今猛威を振るっているコロナウィルスと似ているように感じました。

 withコロナの中過ごしてきた現在の私達にとって、思いを重ねながら読める一冊だと思います。(1組 M君)

 

感染症と立ち向かう、それこそどのような方法が正解なのか後世になってみないとわからないこと。主人公・良策が、とまどいからときには偏見の目を向ける市井の人達の中で、信念を貫き通し奮闘するさまを追ってみてください。

 

 

 斎藤幸平『人新世の「資本論」』

――人新世とは、 人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代のこと。人新世の時代に地球の環境を守っていくための対策について、新たな目線から切り込んでいて興味深い内容でした。現在行われている対策は危機から目を背けさせるためのものに過ぎない、ということに衝撃を受けました。マルクスの思想を通して資本主義の見方を変えると、今後世界はどのようになるべきなのか、改めて考えるきっかけになると思います。(1組 Kさん)

今、現代文で読んでいる「ポストモダンと排除社会」で、現代は「『大きな物語』の強制を放棄し」た時代であると述べていますよね。経済成長=善とされてきた物語が疑問視されるこの時代、社会のありかたをどう考えていいのでしょうか。この本は一つの方向性を示しています。

著者・斎藤幸平さんのインタビューがこちらで読めます。新書がちょっと読みにくいなと思った人、まずはこちらに目を通してみてください!わかりやすい語りで、この本をどのようなスタンスで書いたのかが読み取れます。