課題図書レポート(1学期一斉テストまで)

 今回の一斉テストまでの課題図書は以下3冊。皆さんもだいぶ読み進めている頃でしょう。

2組・3組の図書委員さんによるレビューをお届けします。

①島田雅彦『カタストロフ・マニア』新潮文庫


  目次や書き出しからはどのように物語が進むのか全く想像できなかったが、読み進めるにつれ今の我々にも少なからず関わってくる内容だと感じた。インフラの断絶、未知のウイルスによるパンデミック、AIが行う人類選別等、これから起こってもおかしくない現象や問題が実際に発生した際の深刻さを知ることができた。

 特にボトルネック病に関してはコロナウイルスと重ね合わせて考え、もし対応が遅れていたらこの本のような「カタストロフ」が起きていたのではないかと思うと、現代の日本社会が備え得る脆弱性について深く考えさせられた。この物語で発生した磁気嵐や危機状態下での差別、選別行為は実際に起こりうることであり、これからの日本を生きる私たち自身が出会うかもしれない「カタストロフ」の可能性を頭に置いておくべきだと思った。(2組 HS君)                  

 

②岡本かの子『家霊』ハルキ文庫

 全体的に難しい表現が多かったけれど、語註があるし短編集なので読みやすかったです。その中でも特に読みやすかったお話の感想を書こうと思います。
 

「鮨」
 情景描写が多くて、頭の中で映像として組み立てながら読める物語でした。はじめから三行目の「つまり表通りや……」でとても惹きつけられて、すぐに読み終わりました。ともよと同じようにわたし自身も「先生」がどんな人物なのかもっと知りたい!という思いが読み進めるうちに強くなるのを感じました。
 わたしは食べることが大好きですが、「食べることが苦痛である」という感覚がわかってしまうような辛い表現がいくつかあり、そこだけ読むペースが落ちました。でもそれと同じくらい、初めて鮨を食べた時の文章は味の表現が細やかでおいしそうで、見えてくる映像に色がつくような感覚がしました。先生が鮨に出会えてよかったなと思うし、お母さんの努力も胸に響きました。だからこそエンディングが少しだけ寂しかったです。(2組 SAさん)

 

③中央大学商学部『高校生からの商学入門』中央大学出版部 

  商学の基本が高校生にも分かりやすく書かれている本です。特に印象的だったのは、商品づくりにおいてライバル企業との競走を勝ち抜き、消費者に選ばれるものをつくるために必要なアプローチについてミネラルウォーター「い・ろ・は・す」を通して解説している章です。消費者に選ばれるためには、差異をつくること、既にある価値だけでなく新しい価値を生み出すことが重要だと知り驚きました。
   商品開発の難しさをうかがい知ると同時に、どのような考えのもとでその商品が作られていったのかが分かり、商品を構成するもの全てが考え抜かれた結果であることに感銘を受けました。

 日々なにかを買って生活している私たちにとって、その商品が、ビジネスが、どんな背景のもとに作られているのかということについて興味を持てるきっかけになる1冊だと思います。(3組 SSさん)