課題図書レポート(6月15日まで)

 今回は小説3冊。厚めの本もありますが、読みだすと止まらないこと間違いなしです。

図書委員さんによるレビューをどうぞ。

①京極夏彦『姑獲鳥の夏』講談社文庫

心と脳の不思議さ、怖さを感じられるミステリーとなっています。 

序盤は関口巽と京極堂こと中禅寺秋彦の話す会話の内容が難しく、理解しながら読んでいくのに時間がかかりました。中盤では関口が探偵と京極堂の妹、敦子と一緒に怪事件が頻発している久遠寺医院に出向くのですが、そこから関口の様子が変容していきます。私はそこからどんどん物語に引き込まれていき、読むペースが速くなっていきました。そしてやはりミステリーの一番の見どころといえば謎を解くシーンでしょう。ネタバレになってしまうので詳しいことは言えませんが、どんでん返しの連続でした。自分の予想が裏切られることも多々ありました。最後の最後まで展開がコロコロ変わっていくので目が離せません!(6組OYさん)

②芥川龍之介『地獄変』ハルキ文庫

このお話は短編集なので4つのお話が収録されているのですが、その中から2つ感想を書きます。

「地獄変」
タイトルにもなっている地獄変は芥川龍之介作品の中でも有名な方なので、大枠の話は結構知っている方も多いと思います。しかし、実際読んでみると良秀や大殿様の〈狂気〉の描写が細かく鮮明で、読み手(私)が想像して寒気がしてしてしまうようなものもありました。また、この話の一番ゾッとしたところは〈狂気〉に垣間見える〈人間らしさ〉です。狂気だけだと登場人物に共感しにくいですが、人間らしさが垣間見えることで登場人物を身近に感じることができ、そのことが最後の結末をより一層ゾッとするものにしていると感じました。ぜひ読んでみてください。

「舞踏会」

 菊子の舞踏会での服装や振る舞いなどの描写が綺麗でで想像しやすかったです。
また、最後のオチがノンフィクションなのか、フィクションなのかわからないくらいに見事だなと思いました。
私達中杉生は芸術鑑賞教室でオペラを見たことがあるので、それもこの話が面白いと感じた一つの要因ではないかと思います。(3組SYさん)

 

③門井慶喜『家康、江戸を建てる』

徳川家康を題材にした作品なのに、徳川四天王や有名な人物が出てこないのは斬新だと思いました。知らない人物に感情移入はしにくいのでは無いのかと思いましたが、見事な人物描写で、一人ひとりの立場に立って考えられることが出来ました。この作品は、家康が江戸を作る過程で実際に現場で働いていた人々の短編がいくつか重なって出来ています。細かな方向性はそれぞれ違えど、「いいものにする」という職人魂はどの主人公も同じで、根底でみんな繋がっている感じがとても良かったです。最終章で徳川家康が江戸城から江戸を見下ろして、「わしの街じゃ」と感極まる所がぐっときました。その後、息子秀忠にこれからはお前の時代だと伝えるところが家康の時代、戦国の時代が終わっていくように感じられて、寂しさを感じました。(6組YYさん)