課題図書レポート(一学期期末テスト)

いよいよ期末テスト1週間前ですね。今回の課題図書はこちらです。

 ①中央大学法学部編『高校生からの法学入門』中央大学出版部

(図書委員・4組KUさんレビュー)

『高校生からの法学入門』では法学の基本的な考え方について高校生にも親しみやすい例を用いて説明し、その上で、法学では扱いきれない問題について読者に問いかけるような場面があります。特に感銘を受けたのは、第3章「他人の悪口を言うことは自由なの?」と題し表現の自由について論じた場面です。SNS時代のリスクについて述べている場面で、「SNS上での炎上は二度とネット上から消えることはない」と述べ、筆者はこのような状況の中では「忘れ去られる権利」があっても良いのではないか」と主張しています。近年、若年層のSNSの利用方法に関する問題が度々取り上げられますが、本人がどれだけ反省し、当事者同士で解決しても、ネット上での攻撃が収まらないことには疑問を感じていました。筆者の「忘れ去られる権利」の考え方が広まれば、炎上した人の社会復帰もしやすくなるのではないかと考えました。

 

②大江健三郎『死者の奢り・飼育』新潮文庫


(図書委員・5組TMさんレビュー)

この作品は、「僕」と「女子学生」がアルコール水槽に保存されている解剖用の死体を処理するアルバイトを行うことから展開する話です。"生者"は「僕」や「女子学生」、"死者"は解剖用の死体、と単純に捉えるのではなく、"生者”と"死者”は果たして誰なのか、どう切り取るかによって物語の意味が変わってくると思います。「僕」や「女子学生」は死者と何ら変わらない側面を持ち、一方で死体達はそれぞれに個性があり、生者同然のようにも感じさせるシーンもあります。生と死は、地続きであり、常に隣り合わせなのです。

「僕」や「女子学生」は、普段は遠くにあるはずの意識や揺らぎを、ある時に強く鋭く感じやすくなります。彼らが発する言葉から、彼らは直感に従うと空回りし、様々な事柄に深入りすることになってしまうことも潜在的に理解していると読み取れます。まさに、生と死の境目のない世界を行き来しているのです。そんな彼らが、感じた希望を時として自分の中で制御し、現実的になる、そんな気持ちに共感できるような気がしました。(死者の奢り)

 

③村田沙耶香『コンビニ人間』文春文庫


 (図書委員・4組NTさんレビュー)

この作品では結婚や就職など、周囲から「当たり前」を強要されていく中、主人公が「コンビニの店員」として生きていく姿が描かれています。

主人公が「普通」を演じて生きている姿が印象に残りました。

この作品を通して、「普通」とは何かについて考えさせられました。最初は主人公が変わっている人だと思っていたけれど、周囲に合わせて生きていくどこか息苦しい主人公の様子を見ていくうちに、人それぞれの「普通」があることに気づきました。「普通」という言葉は、普段からよく使われる言葉ですが、誰にとっての「普通」なのかということは考えたことがなかったので、自分が思ったことが「普通」と決めつけないようにしていきたいと思いました。

 

今回の小説は「生者/死者」「普通/普通でない」というものは二項対立的でなく、連綿として繋がっているスペクトラムな関係であるということが描かれていますね。(そして、社会生活を円滑に営む上で、どこで「セーフ/アウト」の線を引かなくてはならないかを考えるのが法、というわけです。) 私達は何に属し、どう生きているのか。そんなことを考えながら、読書を楽しんで下さい。